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Anim制作ドキュメント:一つの点から生まれる世界

ブログ担当のサトマです。
突然ですが皆さま、ドット画お好きですか?

コンピュータービデオゲームというものがこの世に生まれ落ちたと同時に産声を上げたドット画は、デジタル描画の最古と言っていい表現方法と言えるでしょう。
しばらくしてベクタースキャンが生まれ、3点を結んだエリアを塗りつぶすポリゴン描画となり、
そこへ二次元の画像(テクスチャ)を投影するが貼られ……そして3D描画技術は今をもってなお洗練され続けてます。

ではドット描写の作品がこの世から消えてしまったかというとそうではないようでして。
スクエニさんの「オクトパストラベラー」のように、今をもってなおドット画で表現する作品は多くあり、若い世代も楽しんでプレイしている姿を見ると単なる郷愁でなりたっているわけではないのだろうな、などと考えてみたり。

ちなみに今「最近ではオクトパストラベラーのように」と書き出そうと思ったけれど、タイムレンジが最近じゃない世代もいるよそりゃ、と思って踏みとどまった。あぶない。
まぁとにかく、ドット画表現の作品は探してみるとけっこうあるわけです、ガーディアンテイルズとかもそうですね。

僕がゲーム業界に携わり始めたばかりの時代はドット表現のゲームマシンしかなく、ゲーム制作現場で「デザイナー」は「ドット絵師」のことを指していました。
そんな当時、魅惑的な作品を次々と生み出す凄腕ドットデザイナーがおりまして。
ある日その人のモニターにロールシャッハテストで使うような大きなシミがドーンと描かれておりまして、その段階では何を描いているのだがさっぱりわからない。
ですが、僕が外へお昼をとりに行き戻ってくるころにはそこにあったのはロールシャッハのインクのシミではなく、
まるで生きて炎を今吐かんとしている凶悪なドラゴンがそこに鎮座ましましておりまして、いやすげぇ!と。

これを魔法と言わずなんと言うのか!とその感動をデザイナーさんに伝えたはみたものの、
その答えが「これは失敗作なので作り直そうと思ってる」というかみ合わない返答に悶絶してみたりしてました。

そんな僕のドット画の思い出は置いておきまして。
少し前にPlaNetStudioチーフのヒラマさんがウッキウキしながら見せてくれた、とあるドット画お芝居ムービーがあります。

※音声が流れますのでご注意ください!

サトマ「なんだこれすごい」
ヒラマ「ね、すごいでしょ、アニメチームの作品」
サトマ「なにかの出展作品か、社内コンペかなにかです?」
ヒラマ「どこにも発表してないオリジナルもの」
サトマ「え、なんスかそれ、じゃあなんで作られたんです??」
ヒラマ「作りたいから作ったみたい」
サトマ「……」
てなことがありまして、何だよそれ、と。
現代のツールテクノロジーがあれば、一粒一粒を手打ちしなくても制作できることはわかります。が、作りたいから作った、では生まれ落ちるレベルでないですよコレ。

そのあと、この小さな魔女の冒険譚について詳細を聞くタイミングもなく、僕にとってイースター島のモアイ像のように何で作られたのかわからないミステリアスな作品として心にとどまっていたのですが、このブログ記事をお手伝いいただくことになったアニメチームのホープ、ハヤシさんが「私、制作チームにいましたけど」とのこと!
これはチャンス……こんな経緯で運よくお話を伺えたのでつらつらと綴ってみます。

今回ご協力いただくハヤシさん


所属 : アニメチーム 2年目
普段の業務 : 主にlive2Dを使用。2Dイラストのモデリングや衣装差し替え、ムービー用のアニメーション素材などを制作。

よろしくお願いします!
ではまず最初にずばり伺います。どういった経緯で、この作品を作ろうとなったのでしょうか?

ハヤシ「ええと、ドット画表現って、アニメチームの普段業務ではまず担当することがないんですよ」
「でもドット画の制作を通して、普段業務で使用しているツールや作業手法とは違うノウハウを学べるんじゃないかって、ならやってみようか、と」

お、そんな開拓的な理由からなんですね。

ハヤシ「私が参加した時は『ドット画興味ある人いるー?』くらいの緩めにお声かけだったのですが」
ハヤシ「この時はまさか、こんなショートムービー制作することになるとは思っていませんでした」

これだ、これですよ。何のきっかけでムービー作ろうということになったのか。
イースター島のモアイ像、謎が明かされようとしている!

ハヤシ「最初は『ドット画講座』って名前だったんですよ、まだアニメさせましょうという段階ではなくて」
「まず『リンゴをドット描いてみよう』からはじまって。それからロウソクを描いて、それなら炎をアニメさせみよう、走っている人物を描いてみよう、という流れになって」

おお、道筋見えてきましたね、それから?

ハヤシ「で、ドット画ゲームのプロモーションムービーみたいなものを作ろうということになりました」

……いやいや。
いや! どんなジャンプアップをしたらリンゴのドット絵からショートムービー作ってみよう、に着地するの!?
ミッシングリンクにもほどがある!

ハヤシ「あ、その間にクォータービューのマップを描いてみよう、も一応ありました」

だったとしてもミッシングの部分はミッシングのままだよ!
……なんかやりとりが『日常』のゆっことみおちゃんみたいになってる。
ともあれ。これ以上聞いても話が先に進まなさそうだったので、ムービー見ながら制作時のことなど伺ってみることにしました。

そもそも、スタジオ内でもこれを見たことない人いるんじゃないかな。

あ、これ完全に手書きフォントですね、まさにSFC時代。

ハヤシ「そうですね手書きです」

ハヤシ「主に制作に携わったのは3人で、それぞれUI担当、キャラアニメ担当、背景・モンスター担当で……」

ハヤシ「自分は背景・モンスター担当でしたので、この画面だと背景、ボスモンスターと召喚された蛇を作成しました」

全体、色数レギュレーションなど決めていない感じですかね。

ハヤシ「そうですね、練習課題の時は何色で、とかありましたけれど、このムービーの時は制限はなかったです」
「魔女の服の色にベッドの色を寄せたりなどをしながら、全体をまとめていった感じです」

このメッシュの表現技術とかは経験者じゃないとできなさそうですけど……だれかドット画の業務経験者がメンバーにいました?

ハヤシ「あ、今はYouTubeなんかで簡単にそのあたりの情報とれますから」

あーーーそうだった、基礎技術なんて師匠に頭下げて教えてもらう時代はもう終わってましたねしょんぼり。

ハヤシ「そうですね、まず技術的な正解?みたいなことを知ってから、それを手を動かして確かめていくみたいな」

令和時代の正しい技術の伸ばし方を聞いた気がする。なるほど。
ネット環境もろくにない時代の頃、こっそり先輩のPCからデータもってきて内部構造見たりとかしたもんですけれどね……いい時代になりました
ところで、このムービーの総制作時間は……これ自由時間だから算出は難しいです?

ハヤシ「そうですねー自分含めてみなさん、どれくらいの延べ時間をかけたのかはちょっとわかりかねます」
「土日の作業も、ムラがあったりしますしね、進むときはガーってやれちゃうし、疲れている時や用事ある時とかは難しいですし」

こればっかりは仕方ないですね、業務作業以外の創作時間を捻りだすことは、僕達が永遠と悩み続けていかないといけない課題ですね。

さて、ここからはハヤシさんのワークスについて伺っていきます。

まず背景からひも解いていきましょう!

おお、こうしてあらためて見るとシックでよい作りですよね。
イギリスの田舎あたりに実際にありそうなたたずまい。

ハヤシ「ありがとうございます」

ハヤシ「まず見てもらいたいのがコレです」

……
え、えーっと……

ハヤシ「これはキノコです。見てのとおりですが、他のメンバーはずっと卵だと思っていたらしく。おかしいですよね」

は、はい……
えっと、いいです?魔女のいるような世界のキノコって、現実世界のスーパーにあるような白いキノコなんですかね。
もっと毒々しい、その、赤と黒の水玉とか。

ハヤシ「実は私、ファンタジー世界のデザインてあまり得意でなくて。現実世界にあるもののほうがリアリティあるんじゃないかなぁって」

お、おお……はい……

ハヤシ「前に『白いキノコは毒』と聞いたことがありまして、昔遊んだ牧場物語の毒キノコも白かったですし」

な、なるほど。でも何で毒キノコなんです?

ハヤシ「魔女といえば危ないレシピで毒を作るじゃないですか。大きな壷でグツグツと」

え、ええまぁ。毒…だけじゃないかな?他にも呪術とか…

ハヤシ「毒作るじゃないですか」

そうですね、毒です。魔女といえば毒です。

ハヤシ「で、一緒に製作してたスタッフから「これ卵?」って言われて、違います毒キノコですって感じで」

……

オカモト「サトマさんちょっと!」
サトマ「なに?」
オカモト「魔女といえば毒、もアレですが白いキノコが総じて毒ってのもたいがいですよ!エノキとかマッシュルームとか真っ白じゃないですか!」
サトマ「ねー、美味しいですよねー♪(必死」

白くて美味しいキノコの製造企業様、デザインやアニメのお仕事お待ちしております

ハヤシ「あの、続けていいです?」

は、はいすみません。

ハヤシ「空も、最初黄色っぽく彩色していたんですけど、神々が降りてきそうだから、という理由で今の普通の青空になりました」

(そ、そこは現実の空の色じゃないんだ……)

ハヤシ「という経緯があって、こんな仕上がりになりました」

ふむふむ、なるほど。あ、ところでこれツールは何で制作されています?

ハヤシ「Clipstudio(クリスタ)です、使ったツールはこれだけですね」

え、そうなんだ、クリスタだけでこのドット感って出せるものなんです?

ハヤシ「クリスタにはドットペンがありまして、それを使いました」

あるんだ、そんなブラシというかペン先が!
前回の雲ブラシ(りんく)の時も驚いたけれど、たぶん絵描き界隈では常識なんだろうな、個人的に一度ちゃんと網羅的に調べないとなと思いました。

ハヤシ「このタンスとかもこの間実際にたくさんの家具屋でいっぱいタンスを見て、それらをベースにデザインしました」

えーと、に、人間世界の?魔界じゃなくて?

ハヤシ「そうです人間世界の家具屋さんです、人が生活で使うものなら、人の現実世界に沿ってデザインされるべきかな、と思いまして」

ハヤシ「ベッドですが、もともとこちらのダブルベッドたったんですけど」
「よく考えてみたら一人暮らしの女の子の部屋にダブルってないですよねーってことで」

あ、あぁ~そうなんだ、そのー……か、家族構成に変化あったのか……な?

ハヤシ「そうかもしれませんね。で、こちらのシングルベッドになりました」

……

オカモト「ちょっとサトマさん!」
サトマ「なに?」
オカモト「この世界、お値段以上の家具やさんとか、イケたらいいな!みたいな家具屋さん、あるんです!?」
サトマ「あ、あるんじゃないですか?」
オカモト「だったとしたら、どうしてサメのかわいいぬぐるみとか、イートスペースとかがないんです!?」
サトマ「それもどうなの、と思うけれど」

家具製造メーカー様、デザインのお仕事お待ちしております。

ハヤシ「あの、続けていいです?」

は、はい、誠にすみません。

ハヤシ「では次、担当したモンスターたちです」

ハヤシ「こちらがボスの猫です」

ね、猫なんだ、地獄の番犬ケルベロスの猫版。

ハヤシ「このコンテにあるラフ設定から自分が描きこんで、こうしました」

ハヤシ「柄はハチワレです」

は、ハチワレ。

ハヤシ「猫を集めるアプリでおなじみの」

おなじみの

ハヤシ「ファンタジー世界の猫柄ってことで勝手にデザインしても、それじゃ猫だって判別つかない可能性高い気がして」
「だから現実世界の猫柄、ハチワレです」

ハヤシ「で、なるべく怖くしてくれってオーダーがあったので、目つきを、こう、と」

こ、怖そうですね。とっても。ええ。

……

オカモト「ちょっとサトマさん」
サトマ「…はい」

オカモト「ハチワレはいいですよ、かわいいから
サトマ「あ、それはいいんだ」
オカモト「でも現実の猫感を追求するなら、どうして三つ首であることがスルーされてるんですか!?」
サトマ「なんでですかね」
オカモト「それにあの目つき!あれ漁港とかにいる、人に懐いてないタイプの子ですよ!リアリティすごい!」
サトマ「そっすね、リアリティね、すごいね」

猫をあつめるアプリでおなじみの会社様、デザインのお仕事お待ちしております。

ハヤシ「……続けていいです?」

あ、はい、すみませんどうも……

ハヤシ「とは言ったものの、大体の説明は終わっちゃいましたね」

おっと、はい、楽しい制作の説明いただきまして、ありがとうございました!
ハヤシさんにとって、この作品に携わったことは何かプラスになりましたでしょうか?

ハヤシ「自分にとっても、気づきや学びがたくさんある、貴重な制作体験になりました」

アニメチームにかぎらず、スタジオ全体でこういった野心的な活動が活発になるといいなと、噛みしめて思いました。
本日はありがとうございました!

……

改めて作品を見てみましょう!

山奥にたたずむ小さな一軒家。そこに住まう小さな見習い魔女の元へモンスター退治の依頼が。
見習い魔女は快く引き受け、覚えたての召喚魔法を唱えお供を連れて討伐に向かう。
召喚獣の必殺技「疾風迅雷」が難敵「ハチワレ・ニャロベロス」に炸裂する!

制作環境


ハヤシさんはClipstudio(クリスタ)のドットブラシで制作。
他のメンバーは主に、
・Aseprite(メイン)
・Photoshop(微調整用)
・AfterEffects(動画編集用)
・Premiere(BGMマスタ作業用)
といったツールが使用されていたとのことです。
リストの下3つはお馴染みとして、Asepriteがひときわ目立ちますね。
ドット画、そのアニメデータ作成ではとても有用らしく、恥ずかしながら僕は知らなかったです。
steamツールなんですね。アプリの配布手段としてはsteamってとても有効なのかな、とくにゲーム制作ツールなどは適材適所なのかも。

白い毒キノコの正体


ハヤシさんの言っていた「白いキノコは毒なんです」はおそらく「ドクツルタケ」のことですね。
ドクツルタケはテングタケの一種で毒性がとても高く、「殺しの天使」などという左手から暗黒龍を出せるぜ的な二つ名がついているようで。
その美しい白さから毒を連想しにくいのか毒と気づかず食べてしまう事故が起こるため、
白いキノコ「は」気を付けよう、と注意喚起されているようで、その言葉がハヤシさんの心に残っていたのでしょう。
という理由でこの籠に入った白いキノコになったのでしょうが、まぁ見た目は美味しそうなマッシュルームです。

ミッシングリンクの真相


冒頭で「なぜこれが作られたのか謎」と書き出しましたが、どうやらその謎が解明されたかも。ちょっと解説します。
当初僕は 「リンゴ習作 > ショートムービー作成」というベクトル
すなわち「作業リソースがある、では何か作ろうか、となったんだろうな」の前提でこの制作物をとらえていました。
しかし。実はこれ、ひょっとしたらそのベクトル逆かもしれないな、と思っているのです。

というのも

このムービーの制作仕様と制作管理書面の出来が素晴らしく、全てはお見せできませんが、これはその書面の一部。
ちょっと思いつきで作った感じではなく「これを作る」という確固たる意思が感じられるのです。
ここで1つ仮説が浮かび上がります。

ドット画習作のメニューが「このムービーを作り上げるだけの技術とセンスがあるか」それを見極めるために組み立てられていたとしたら、どうでしょうか?
すなわち、

リンゴのドット画習作
└まずドット画作品を作るだけの力があるか
炎、歩きなどのドットアニメ習作
└同、アニメさせることができるかどうか
クォータービューのドット背景習作
└背景素材も問題なくドット画風に仕上げることができるか
これらの習作項目において、技術とセンスが目標ラインに到達したので、「よし、じゃあ満を持してこのショートムービー作りましょうか」となったのでは、と思うわけです。

そもそも仕様書面が優秀だということもあるのでしょうが、実際にハヤシさんも
「制作の方向性がキッチリ決まっていたのでとても作りやすかった」と言っていました。

前もってこの制作シナリオが用意されていた可能性を示唆する理由の一つと言えるでしょう。
こう考えるとリンゴからいきなりムービー制作へシフトしたことも説明がつくような気がします。
全てはベクトルが逆だったのだ、と。僕個人としてはそんな風に感じています。

そして。
このショートムービー作品今までなぜ、表舞台に立つことなくこうしてずっと埋もれていたのか。不思議と言えば不思議です。
制作者というものはおおむね、自ら愛情をこめて仕上げた作品は少なかれ世に羽ばたかせたい、と思うのが普通なのですが、

この作品の制作過程がいつの時かこうして誰かに考察され、それなりに読み応えのあるドラマとともに発表される前提で作られたのではないか……?

僕ことサトマはその用意されたレールの上であることに気づかずこのエントリー記事を作成したのではないか、と。
そんなふうに考えると発表されずに埋もれていた理由も説明がついてしまう。もしそうだとするとこのショートムービーの監督の見通す力の何と恐ろしいことか……
クラインの壺に手を不用意に突っ込んでしまったような、そんなもやっとした気分になってしまいます(これは僕の妄想ですが)。

まぁでも、そんないわば神様的な視点でこの作品がリリースされていたとしても、
その神様はまさか作内に人間世界のタンスやハチワレ猫が入れ込まれることまでは想定できていなかったでしょうよ!

最終的にはハヤシさんが全てもっていってくれた、というところで落とさせていただきますね(笑)

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